安心解説:暗号資産の保管場所、取引所とウォレットの安全性を比較
暗号資産、どこに保管すれば安全?初心者が知るべき保管場所の基礎知識
暗号資産取引に興味を持たれた方の多くが、「買ってみたのはいいけれど、どこに保管しておくのが一番安全なのだろう?」と疑問に思われるのではないでしょうか。銀行預金のように「銀行に預けておけば安心」というシンプルな形ではないため、不安を感じることもあるかもしれません。
暗号資産を安全に管理するためには、その仕組みと主な保管方法を知ることが大切です。この記事では、暗号資産の保管場所として利用される「取引所」と「ウォレット」に焦点を当て、それぞれの特徴やメリット・デメリット、特に安全性について比較しながら、初心者の皆様が安心して保管場所を選べるように分かりやすく解説します。
暗号資産の「保管」とは何を指すのか?
暗号資産の世界で「保管する」という場合、それは「暗号資産そのもの」を物理的にどこかにしまうことではありません。実際には、その暗号資産を「動かすための権利」を管理することを指します。この「動かすための権利」は、「秘密鍵(プライベートキー)」と呼ばれる非常に重要な情報によって証明されます。
秘密鍵を持っている人だけが、その暗号資産を売却したり、他の場所に送金したりすることができます。つまり、暗号資産の保管において最も重要なのは、この秘密鍵を安全に管理することなのです。
この秘密鍵を管理する方法として、主に以下の二つがあります。
- 暗号資産取引所に管理を任せる
- 自分でウォレットを使って管理する
それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
暗号資産取引所に預ける場合の安全性
多くの初心者の皆様は、暗号資産を購入した後、そのまま購入した取引所の口座に置いておかれることと思います。これは最も手軽な方法です。
取引所に預けるメリット
- 手軽さ: 購入した取引所にそのまま置いておけるため、特別な操作や準備が必要ありません。
- 売買のしやすさ: 取引所に預けておけば、いつでもすぐに売却したり、他の暗号資産と交換したりできます。
- 管理の手間がない: 秘密鍵の管理は取引所が行うため、自分で複雑な管理をする必要がありません。
取引所に預けるデメリットとリスク
取引所に預けておくことには、いくつか注意すべきリスクがあります。
- ハッキングリスク: 取引所は多くの利用者の資産を管理しているため、悪意のある第三者からのハッキングの標的となりやすい傾向があります。もし取引所がハッキングされ、セキュリティを突破されてしまうと、預けていた資産が不正に流出してしまう可能性があります。過去には大手取引所がハッキング被害に遭った事例もあります。
- 取引所破綻リスク: 取引所も企業であるため、経営状況によっては破綻する可能性もゼロではありません。万が一、取引所が破綻した場合、預けていた資産がすぐに引き出せなくなる、あるいは失われてしまうといったリスクが考えられます。(日本の多くの取引所は、利用者の資産と会社の資産を分けて管理する「分別管理」を行っていますが、リスクが全くないわけではありません。)
- 「自分の資産ではない」状態: 厳密に言うと、取引所に預けている間は、秘密鍵は取引所が管理しています。つまり、資産の「所有権」は自分にあっても、それを動かすための「管理権」は取引所にあります。これは、銀行にお金を預けるのと似た側面があります。
安全性を高めるためのポイント(取引所に預ける場合)
取引所に預ける場合でも、安全性を高めるための対策は重要です。
- 信頼できる取引所を選ぶ: 金融庁の登録を受けた国内の暗号資産交換業者であること、過去の運営実績、セキュリティ対策(コールドウォレットでの資産管理の割合、マルチシグ採用など)、会社の信頼性などを基準に、慎重に取引所を選びましょう。
- 二段階認証などのセキュリティ設定を必ず行う: 取引所のアカウントへの不正アクセスを防ぐため、二段階認証(ログイン時や出金時にパスワードだけでなく、スマホアプリなどによる認証コードも要求される仕組み)は必ず設定してください。
- 利用しない資産は分散させる: もし多額の暗号資産を保有する場合、一つの取引所に集中させず、複数の取引所に分散させることもリスク軽減につながります。
ウォレットを使って自分で管理する場合の安全性
ウォレットとは、暗号資産の秘密鍵を管理するためのソフトウェアやハードウェアのことです。ウォレットを使うことで、取引所を介さずに自分で秘密鍵を管理することができます。
ウォレットには、インターネットへの接続状況によって大きく二つの種類があります。
- ホットウォレット: インターネットに接続されているウォレット。
- 種類: ウェブウォレット(ブラウザで使う)、デスクトップウォレット(PCにインストール)、モバイルウォレット(スマホアプリ)。
- メリット: 手軽に利用でき、送金や受け取りがすぐにできる。
- デメリットとリスク: インターネットに接続しているため、ハッキングやウイルス感染のリスクが取引所よりは低いですが、存在します。特にウェブウォレットはサイト自体の信頼性も重要です。
- 安全性を高めるポイント: 信頼できる提供元のウォレットを選ぶ、使用するPCやスマホのセキュリティ対策(ウイルス対策ソフト、OSのアップデート)をしっかり行う、秘密鍵やリカバリーフレーズ(ウォレットを復元するための合言葉)を安全に管理する。
- コールドウォレット: インターネットから完全に切り離された状態で秘密鍵を管理するウォレット。
- 種類: ハードウェアウォレット(USBのような専用機器)、ペーパーウォレット(秘密鍵と公開鍵を紙に印刷したもの)。
- メリット: インターネットに接続しないため、ハッキングのリスクが極めて低い、高いセキュリティを実現できる。
- デメリットとリスク: 手軽さに欠ける(利用時にオフライン/オンラインの操作が必要)、機器の故障や紛失・盗難のリスク、紙媒体の劣化や紛失リスク(ペーパーウォレットの場合)。
- 安全性を高めるポイント: 信頼できるメーカーのハードウェアウォレットを選ぶ、ハードウェアウォレット自体やリカバリーフレーズを物理的に安全な場所に保管する、ペーパーウォレットの場合は印刷した紙の保管に細心の注意を払う。
ウォレットを使う場合の共通の注意点
ウォレットを使って自分で秘密鍵を管理する場合、その責任は全て自分にあります。
- リカバリーフレーズの厳重な管理: ウォレットを復元するために必要なリカバリーフレーズ(シードフレーズとも呼ばれます)は、絶対に他人に知られてはいけません。また、紛失するとウォレットにアクセスできなくなり、資産を失う可能性があります。紙に書き出して安全な場所に複数保管するなどの対策が必要です。
- 秘密鍵の取り扱い: 秘密鍵は絶対にオンライン上に保存したり、安易にコピーしたりしないでください。秘密鍵を他人に知られることは、資産を全て明け渡すことと同じです。
初心者は「取引所」と「ウォレット」、どちらを選ぶべきか?
結論から申し上げると、暗号資産取引の初心者の皆様は、まずは信頼できる国内の暗号資産取引所に口座を開設し、少額から取引を始めるのが最も一般的で手軽な方法です。
ただし、その際に「取引所に預けておくことにはハッキングや破綻のリスクがある」ということを理解しておくことが重要です。そして、利用する取引所がどのようなセキュリティ対策(分別管理、コールドウォレットでの保管割合、二段階認証の推奨など)を行っているかを確認しましょう。
取引所のセキュリティ対策をしっかりと確認し、ご自身でも二段階認証などの設定を徹底していれば、ある程度の安全性は確保されます。
もし、暗号資産に慣れてきて、まとまった金額を長期的に保有したいと考えるようになった場合は、コールドウォレットのような、より安全性の高い保管方法を検討するのも良いでしょう。
まとめ:リスクを理解し、ご自身に合った安全な保管方法を選びましょう
暗号資産の保管方法には、取引所に預ける方法と、ウォレットを使って自分で管理する方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、特に安全性については考慮すべき点があります。
- 取引所: 手軽で売買がしやすい反面、ハッキングや取引所破綻のリスクがあります。利用する場合は、信頼できる取引所を選び、ご自身でも二段階認証などを必ず設定してください。
- ウォレット: 自分で秘密鍵を管理するため、取引所のリスクを回避できます。特にコールドウォレットは高い安全性を提供しますが、自己管理の責任が伴います。リカバリーフレーズの厳重な管理が必須です。
初心者の皆様は、まず信頼できる取引所からスタートし、取引に慣れていく過程で、ご自身の資産状況や暗号資産への理解度に合わせて、ウォレットでの自己管理も検討していくのが良いでしょう。
いずれの方法を選ぶにしても、最も大切なのは、それぞれの保管方法が持つリスクを正しく理解し、ご自身で可能な限りのセキュリティ対策を行うことです。常に最新の情報に注意を払いながら、ご自身の資産を安全に守っていきましょう。