【安心ガイド】暗号資産の長期保有(ガチホ)で注意すべき点と安心して続けるコツ
はじめに:長期保有(ガチホ)は初心者にとって本当に安心?
暗号資産取引に興味を持たれた方のなかには、「頻繁に売買するのは難しそうだから、買ってしばらく持っておく(長期保有、いわゆる『ガチホ』)のが良いのでは?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。短期的な価格の変動に一喜一憂せずに済むという点では、長期保有は初心者の方にとって取り組みやすい戦略の一つと言えるでしょう。
しかし、長期保有にも知っておくべきリスクや注意点があります。それらを正しく理解し、適切な対策を講じることで、より安心して暗号資産を長期で保有することができます。
この記事では、暗号資産を長期保有する際に考慮すべきリスクと、それに対する具体的な対策、そして安心して保有を続けるための「コツ」を、初心者の方にも分かりやすく解説します。
暗号資産を長期保有する魅力
なぜ、多くの人が暗号資産を長期保有するという戦略を選ぶのでしょうか。その主な魅力は以下の通りです。
- 価格変動による精神的負担の軽減: 短期間での価格の大きな上下動に神経をすり減らす必要がありません。
- 取引の頻度が少なく手間がかからない: 一度購入すれば、基本的にはそのまま保有し続けるため、日々のチャート分析や売買のタイミングを測る手間が省けます。
- 複利効果の期待: 長期で保有することで、価格の上昇による利益がさらに次の価格上昇につながる、いわゆる複利のような効果が期待できる場合があります(ただし、保証されるものではありません)。
これらの魅力から、特に暗号資産取引に慣れていない初心者の方にとって、長期保有は取り組みやすい選択肢の一つと言えます。
長期保有に潜む主なリスク
長期保有は取り組みやすい一方、以下のようなリスクが存在します。これらのリスクを理解することが、安心して保有を続ける第一歩です。
価格変動リスク
「長期なら大丈夫」と思われがちですが、暗号資産の価格は長期的に見ても大きく変動する可能性があります。購入時より大幅に下落し、そのまま回復しない、あるいは回復に非常に長い時間がかかる可能性もゼロではありません。市場全体の動向や、保有している特定の暗号資産に関するニュース、技術的な変化などが価格に影響を与えます。
保管場所のリスク
暗号資産は、物理的な「モノ」として手元にあるわけではありません。多くの場合、暗号資産取引所に預けておくか、自分でウォレットを用意してそこに保管します。
- 取引所に預ける場合: 取引所がハッキング被害に遭ったり、破綻したりした場合に、預けていた暗号資産が引き出せなくなるリスクがあります。日本の多くの取引所は顧客資産と自社資産を分けて管理(分別管理)していますが、完全にリスクがないわけではありません。
- ウォレットで自分で管理する場合: 秘密鍵(暗号資産を動かすために必要な、銀行の暗証番号のようなもの)を紛失したり、第三者に知られたりすると、暗号資産をすべて失ってしまうリスクがあります。また、ウォレット自体を狙ったフィッシング詐欺にも注意が必要です。
情報リスク
インターネットやSNS上には、暗号資産に関する様々な情報が飛び交っています。根拠のない価格予想、特定の銘柄を推奨する煽り情報、偽のプロジェクト情報など、不確かな情報に惑わされて、焦って売買したり、詐欺に遭ったりするリスクがあります。長期保有を続けている間も、こうした情報に触れる機会は多くあります。
税金リスク
暗号資産で得た利益には税金がかかります。長期保有の場合でも、保有している暗号資産を売却して日本円に換金したり、他の暗号資産と交換したりした際に利益が出ていれば、原則として課税の対象となります。税金に関する知識がないと、知らずに税金を滞納してしまったり、思わぬ税負担が発生したりするリスクがあります。
安心して長期保有を続けるための対策とコツ
上記のリスクを踏まえ、安心して暗号資産を長期保有するためには、以下の対策や考え方が重要になります。
1. 余剰資金で取引を行う
最も基本的かつ重要な対策です。生活に必要な資金や、近い将来使う予定のある資金で暗号資産を購入することは避けてください。仮に価格が大きく下落しても、すぐに売却する必要がない「余剰資金」で行うことで、価格変動による精神的なプレッシャーを大幅に軽減できます。これにより、一時的な価格下落で慌てて売却してしまう事態を防ぎやすくなります。
2. リスク許容度を理解し、無理のない範囲で投資する
「どれくらいまでなら損失が出ても生活に影響がないか」「価格がどこまで下がったら精神的に耐えられなくなるか」といった、ご自身の「リスク許容度」を事前に理解しておくことが大切です。そのリスク許容度を超えない範囲で、投資金額や保有する暗号資産の種類を検討してください。
3. 保管場所のセキュリティを確保する
- 取引所の選定: 過去にハッキング被害がないか、利用者保護の体制(分別管理、信託保全など)は整っているか、二段階認証以外のセキュリティ対策(多要素認証など)を提供しているかなど、信頼性とセキュリティ対策がしっかりしている取引所を選びましょう。日本の金融庁に登録されている暗号資産交換業者であることは必須の条件です。
- ウォレットの検討: 長期間大量の暗号資産を保有する場合、取引所に預けっぱなしではなく、ご自身で管理するウォレット(特にインターネットから切り離された「コールドウォレット」と呼ばれるもの)での保管も選択肢に入ってきます。ただし、ウォレットは自己責任での管理となるため、秘密鍵の厳重な管理方法などを十分に理解してから利用を判断してください。
4. 信頼できる情報源を見極める
長期保有中も、保有している暗号資産に関する重要な情報(プロジェクトの進捗、技術的なアップデート、規制の動向など)を定期的にチェックすることは大切です。その際、公式サイト、信頼できるニュースサイト、専門家の分析など、根拠に基づいた信頼できる情報源から情報を得るように心がけてください。SNSなどの匿名性の高い情報源は、あくまで参考程度に留め、鵜呑みにしないようにしましょう。
5. ノイズに惑わされない心の持ち方
長期保有中には、価格が大きく上昇したというニュースや、逆に暴落したという情報に触れる機会があるでしょう。また、「今すぐ売らないと損する」「このコインは〇倍になる」といった煽り情報も目にするかもしれません。こうした「ノイズ」に一喜一憂せず、なぜその暗号資産を長期で保有しようと決めたのか、当初の目的や根拠を思い出してください。短期的な値動きに振り回されず、落ち着いて状況を見守る精神的な強さが、長期保有を成功させる鍵となります。
6. 税金について基本的な知識を身につける
暗号資産に関する税金のルールは複雑ですが、基本的な考え方や、ご自身の取引でどのような場合に税金が発生するのかを理解しておくことは重要です。取引履歴をきちんと管理し、確定申告が必要になった際に困らないように準備しておきましょう。不安な場合は、税理士などの専門家に相談することも検討してください。
長期保有を始める前の最終チェック
長期保有を始める前に、以下の点を再度確認してみてください。
- 投資に回しても良い「余剰資金」ですか?
- 最悪の場合、その資金を失っても生活に影響はありませんか?
- 保有しようとしている暗号資産について、基本的な情報(プロジェクトの概要、使われ方、将来性など)を理解していますか?
- 信頼できる暗号資産取引所で口座を開設しましたか?セキュリティ対策は十分ですか?
- 価格が大きく下落した場合でも、すぐに売却しないという覚悟はできていますか?
これらの問いに「はい」と答えられるのであれば、長期保有という選択肢も検討に値するでしょう。
まとめ
暗号資産の長期保有(ガチホ)は、初心者の方にとって比較的取り組みやすい戦略ですが、決してリスクがないわけではありません。価格変動リスク、保管場所のリスク、情報リスク、税金リスクなど、様々なリスクが潜んでいます。
しかし、これらのリスクを正しく理解し、余剰資金での取引、適切な保管方法の選択、信頼できる情報源の見極め、そしてノイズに惑わされない心の持ち方といった対策を講じることで、より安心して暗号資産を長期で保有することが可能になります。
暗号資産取引は、常に自己責任が伴います。長期保有を選択される場合も、ご自身でリスクを管理し、安心して取り組み続けるための知識と準備を怠らないようにしましょう。継続的な学習が、安全な暗号資産取引の基盤となります。