【安心ガイド】暗号資産取引、複数の取引所を利用するメリットとリスク対策
暗号資産取引に少し慣れてくると、「他の取引所も使ってみたい」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。取引所ごとに特徴があり、複数の取引所を使い分けることにはいくつかのメリットが存在します。しかし、その一方で、管理の手間やセキュリティに関するリスクも増える可能性があります。
この記事では、暗号資産取引で複数の取引所を利用するメリットと、安全に使い続けるためのリスク対策について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
なぜ複数の取引所を利用するのか?メリットを理解する
複数の暗号資産取引所に口座を持つことには、以下のようなメリットが考えられます。
1. 取引所リスクの分散
一つの取引所に全ての資産を預けている場合、万が一その取引所が破綻したり、サービスを停止したりした場合に資産が引き出せなくなるリスクがあります。複数の取引所に資産を分散しておくことで、このような事態が発生した場合でも、全ての資産を一度に失うリスクを軽減できます。これは、銀行預金を複数の銀行に分ける考え方に似ています。
2. 取り扱い銘柄の多様性
取引所によって取り扱っている暗号資産の種類が異なります。一つの取引所では購入できない暗号資産も、別の取引所では取り扱っている場合があります。複数の取引所に口座を持つことで、より幅広い種類の暗号資産にアクセスできる可能性が広がります。
3. 手数料やサービスの比較・活用
取引所ごとに取引手数料、入出金手数料、スプレッド(買値と売値の差)などが異なります。また、提供しているサービス(積立サービス、レンディング、ステーキングなど)やツールも様々です。複数の取引所を比較し、取引内容や目的に合わせて最適な取引所を使い分けることで、コストを抑えたり、より便利なサービスを利用したりできる可能性があります。
4. システム障害時のリスク軽減
特定の取引所でシステム障害が発生し、取引や資産の移動ができなくなる可能性もゼロではありません。複数の取引所に口座があれば、一つの取引所で問題が発生しても、他の取引所を利用して資産を管理できる場合があります。
複数の取引所を利用する際に潜むリスクと注意点
複数の取引所を利用することにはメリットがある一方で、管理が煩雑になり、それに伴うリスクも発生します。安全に利用するためには、これらのリスクを十分に理解しておくことが重要です。
1. 管理の煩雑さによるヒューマンエラーのリスク
複数の取引所に口座を持つと、それぞれでID、パスワード、二段階認証の設定などを管理する必要があります。管理がずさんになると、パスワードを忘れたり、ログイン情報を誤って第三者に知られたりするリスクが高まります。
2. セキュリティ対策の手間とリスクの増加
各取引所でセキュリティ設定を行う必要があります。二段階認証の設定漏れや、登録メールアドレスへのフィッシング詐欺メールなど、管理対象が増える分、どこかにセキュリティ上の隙が生まれるリスクも高まります。
3. 税務申告の複雑化
複数の取引所で取引を行うと、それぞれの取引履歴を管理し、損益計算を行う必要があります。取引回数が多い場合や、取引所間で暗号資産を移動させた場合など、税務申告に必要な計算がより複雑になります。
4. 暗号資産送金時のリスク
取引所間で暗号資産を送金する際に、送金先アドレスやネットワークを間違えると、資産を失ってしまうリスクがあります。複数の取引所を利用する機会が増えると、送金操作を行う頻度も増え、ヒューマンエラーの可能性も高まります。
5. 情報過多による判断ミス
複数の取引所や関連サービスの情報に触れる機会が増えることで、情報の取捨選択が難しくなり、誤った情報に基づいた判断をしてしまうリスクも考えられます。
複数の取引所を安全に使い分けるための具体的な対策
複数の取引所を利用することによるリスクを軽減し、安全性を高めるためには、以下の対策を徹底することが非常に重要です。
1. 厳重なID・パスワード管理と二段階認証の徹底
- 各取引所で異なる、推測されにくい強固なパスワードを設定する: 同じパスワードの使い回しは絶対に避けてください。
- パスワードマネージャーの活用: 多数のIDとパスワードを安全に管理するために、信頼できるパスワードマネージャーの利用を検討しましょう。
- 全ての取引所で二段階認証を必ず設定する: SMS認証だけでなく、認証アプリ(Google Authenticatorなど)や物理的なセキュリティキーの利用を強く推奨します。
- 二段階認証のリカバリーコードを安全に保管する: スマートフォンを紛失した場合などに必要となります。
2. 各取引所のセキュリティ対策を理解し活用する
利用している取引所のセキュリティ対策(コールドウォレットによる顧客資産の管理、マルチシグネチャ、不正ログイン検知システムなど)について理解しておきましょう。また、各取引所が提供する追加のセキュリティ機能(ログイン履歴の確認、出金制限設定など)があれば積極的に活用してください。
3. 取引履歴の正確な記録と税務への備え
全ての取引所での取引履歴データを定期的にダウンロードし、安全な場所に保管しておきましょう。損益計算ツールや税理士の活用も視野に入れると良いでしょう。
4. 送金時には必ずテスト送金を行う、アドレス・ネットワークを複数回確認する
少額でのテスト送金をまず行い、正しく送金できるか確認してから、本格的な送金を行うようにしましょう。送金先アドレスと使用するネットワーク(例:ERC20, BEP20など)は、必ず複数回指差し確認などで間違いがないか確認してください。取引所によっては、特定のネットワークにしか対応していない場合があります。
5. 信頼できる情報源からの情報収集に努める
公式サイトや信頼できるニュースメディアなど、正確な情報源から情報を得るように心がけましょう。SNSなどの情報には誤りや詐欺的なものが含まれている可能性も高いため、鵜呑みにしないことが大切です。
6. 利用する取引所の数を絞り、無理のない範囲で管理する
メリットがあるからといって、無計画に多数の取引所に口座を開設することは避けるべきです。まずは2~3社に絞り、ご自身が管理できる範囲で利用を開始することをおすすめします。しばらく使わない取引所の口座は、資産を移動させた上で閉鎖することも検討しましょう。
まとめ:安全第一で複数の取引所を活用するために
複数の暗号資産取引所を使い分けることには、資産を分散させるなど、安全性や利便性の向上に繋がるメリットがあります。しかし、管理の手間が増え、ヒューマンエラーやセキュリティリスクを高める可能性も否定できません。
最も重要なのは、メリットを享受することよりも、ご自身の資産を安全に守ることです。すべての取引所で厳重なセキュリティ対策を徹底し、管理を怠らないことが大前提となります。
この記事でご紹介したリスクと対策を参考に、ご自身の目的と管理能力に合わせて、安全第一で複数の取引所活用を検討してください。もし少しでも不安を感じる場合は、まずは一つの信頼できる取引所での取引に慣れることに専念するのが良いでしょう。